ハリのある、すこやかな肌を維持するためにスキンケアは欠かせませんが、スキンケアと同じくらい大切なのは、体内からケアすることです。
近年では食品由来の様々な機能性成分の働きが明らかになり、よりいっそう健康や美と食事への関心と理解が深まっています。
食生活のコントロールをうまくすることによって、化粧品のような外面的なケアだけでなく体の内側から健康的で美しい肌になることができるのです。
この記事では、美しい肌に欠かせない「栄養素」について解説します。
基本的な栄養素とその役割
人は食事をすることで様々な物質を消化・吸収して体内に取り込み、分解・吸収して成長や生命活動に必要な成分に変換していきます。
この営みのことを「栄養」といい、食事から摂取される物質(食品成分)のことを「栄養素」といいます。
体内に吸収された栄養素は体内での働きによって、
- エネルギーを作るもの(たんぱく質・脂質・糖質)
- 体を作るもの(たんぱく質・脂質・ミネラル)
- 体調を整えるもの(たんぱく質・脂質・ビタミン)
の3つに分類することができます。
たんぱく質・脂質・糖質は合わせて3大栄養素と呼ばれ、これらの栄養素をサポートするビタミン・ミネラルを合わせて5大栄養素と呼びます。
栄養素は40〜50種類ありますがそれぞれが単体で作用しているわけではなく、全てが鎖のように連なって連鎖しているため、食事では各種栄養素をまんべんなく、バランスよくとることが必要です。
間違った食事でのスキンケアで、
「コラーゲンを食べれば、肌がプルプルに!」
「太りたくないからお肉や油はとらない!」
など聞くことがありますが、偏った知識と栄養の取り方ですと余計に美肌から遠のいてしまいます。
食事から栄養素を摂取する意味を正しく理解し、無理のない範囲で内側から健康で美しい肌づくりを行っていきましょう。
5大栄養素と肌の関係
肌の状態は日常生活のいろいろな条件によっても変わってきますが、中でも重要なのが食事です。
生命を維持し健康を保つために必要なたんぱく質・脂質・糖質はもちろんのこと、それらをサポートするビタミン・ミネラルは美しい肌を維持するためにどれ1つとして欠くことはできません。
たんぱく質
たんぱく質は筋肉や臓器など体を構成する主成分で、20種類のアミノ酸が結合して作られます。
肌のハリやうるおいに欠かせないコラーゲンも、たんぱく質の一種です。
たんぱく質を適切に摂取することで肌は新しい細胞が作り出せる状態になり、ターンオーバーが正常化していきます。
逆にたんぱく質が不足すると新しい細胞を作ろうとしてもその材料となるたんぱく質がないため、ターンオーバーが滞り様々な肌トラブルの原因になってしまいます。
さらには内臓や毛髪など体のありとあらゆる部分に影響してしまい、長期にわたって不足すると生命をも脅かすことに。
肌のためにも健康のためにも、しっかりと摂取していきたいですね。
たんぱく質の1日の摂取基準量は18〜69歳の男性で60g、女性で50gです。
過剰摂取になると、腎臓に大きな負担がかかったり、骨粗鬆(こつそしょう)症を招くこともあるので食べ過ぎには要注意です。
人体では合成できないアミノ酸を「必須アミノ酸」と言いますが、たんぱく質を摂取する時には、なるべく必須アミノ酸のうち
- イソロイシン
- ロイシン
- リジン
- バリン
- メリオニン
- フェニルアラニン
- トリプトファン
- スレオニン
の8種類を摂取できる、質のいいたんぱく質を食べるようにしましょう。
たんぱく質には「動物性たんぱく質」と「植物性たんぱく質」がありますが、動物性たんぱく質を摂る時に気をつけたいのが、一緒に摂取してしまう脂質です。
脂質
脂質は嫌厭されがちですが、細胞の構成成分として欠かせません。
適度な脂質の摂取は、肌のハリやなめらかさを維持してくれます。
ただし、脂肪はとる種類や量によっては肥満や病気の原因になるので注意が必要です。
脂肪には大きく分けて「飽和脂肪酸」と「不飽和脂肪酸」の2種類があります。
- 飽和脂肪酸
……動物性(肉やバター)から摂取する脂質で、肥満や動脈硬化の原因になりやすい。
スナック菓子などの加工食品にも多く含まれます。 - 不飽和脂肪酸
……植物系や、青魚などから摂取する脂質で、美肌や健康のサポートをしてくれる。
特に不飽和脂肪酸には、体や肌を健康にする様々な成分・効能があることが近年の研究で明らかになってきています。
不飽和脂肪酸の一種のオレイン酸やγ-リノレン酸などにはコレステロール値を下げたり、リノール酸やEPA(イコサペンタエン酸)にはアレルギー疾患やアトピー皮膚炎症を緩和してくれる作用などが認められています。
敏感肌の方の中には花粉などへのアレルギーやアトピーがある方も多いので、不飽和脂肪酸が肌の調子を整えるのに有効です。
飽和脂肪酸は血中にとどまりコレステロール値をあげたり動脈硬化を引き起こしたりと、あまり量を摂取しすぎない必要があります。
上手な脂質の摂りかたは、飽和脂肪酸は避け不飽和脂肪酸をメインに摂取していくことです。
肉類はなるべく脂質が少ない赤身肉や鶏の胸肉を。
肉の代わりに、新鮮な魚を。
大豆などの植物系たんぱく質も、必須アミノ酸が摂取できる良質な素材です。
きなこや豆腐なども上手に食事に取り入れましょう。
糖質
甘いものを食べ過ぎると太る、というのはなんとも悩ましいことですよね。
では、なぜ炭水化物や砂糖に含まれる糖質が、脂肪に変化してしまうのでしょうか。
糖質は、私たちの活力源となっているエネルギーを生み出し、体内での様々な重要物質の合成にも利用されている栄養素です。
小腸で消化・吸収された糖質はエネルギー源として消費されるほか、肝臓でブドウ糖に変換されグリコーゲンとして蓄えられたり、脂肪酸やアミノ酸の合成に利用されます。
しかし、この肝臓に貯蔵できる分を超過して糖質を摂取した場合、血糖値が上がるのを防ぐためにインシュリンという成分が糖質を脂肪に変換してしまうのです。
近年では、糖質の摂りすぎは肌にも悪影響を及ぼすことがわかっています。
糖質は過剰に摂取してしまうと、細胞のタンパク質と結びついて「AGEs」という成分を合成します。
この現象を「糖化」と言います。
糖化した細胞は茶褐色にくすみかたくなるため肌のシミやくすみを招き、ターンオーバーを阻害することで新しく健康な肌細胞が作られず、シワや乾燥、たるみの原因になります。
とはいえ、糖質なしには私たちの体は活動しません。
甘い菓子類を控えるなど、できる範囲で量をコントロールしましょう。
ビタミン
ビタミンはまさに美しい肌を作るのに欠かせない栄養素です。
ビタミンには、たんぱく質・脂質・糖質の三大栄養素の潤滑油となって、代謝をスムーズにする役割があります。
言い換えると、ビタミンが不足してしまうと体内の代謝が思うようにならず、せっかく摂取した栄養素を無駄にしてしまうのです。
食べ物からの摂取がしやすいビタミンですが、このビタミンの不足は肌の調子に現れやすいのも特徴です。
ミネラル
ミネラルを摂りましょうというけど、ミネラルって肌になんでいいの?と思ったことはありませんか?
ミネラルはごく微量ながらも、体内とても重要な役割を果たしています。
美容面で考えてみると、例えば大半の人が困ったことがあるであろう、むくみ。
これは、カリウムというミネラルが不足していると起きやすくなります。
また、鉄分や亜鉛は肌のハリの土台となるコラーゲンの生成・新陳代謝を促進しますし、カルシウムは骨の形成には欠かせません。
特に、加齢とともに骨密度が下がると、顔のたるみやシワの原因になるという研究も。
ミネラルは美しい肌を陰ながらサポートしてくれる、縁の下の力持ちのような栄養素なのです。
お肌の悩み別の栄養素の摂り方
代表的な栄養素の働きがわかったところで、
ではお悩み別に摂取したい栄養素を見てみましょう。
乾燥肌でお悩みの方
乾燥肌の人に積極的に摂取してもらいたい栄養素は、
- たんぱく質
- 脂質(不飽和脂肪酸をメインに)
- 亜鉛
- 鉄分
- ビタミン類
です。
乾燥肌の人に必要なのは、何よりも肌の保水力をあげ、バリア機能を整えること。
まずは肌の元となるたんぱく質で、細胞の代謝をしっかりと行える土台を作ることが重要です。
肌の保水力を上げる天然保湿因子(NMF)やセラミドなどは、細胞が上手に代謝され新しく作り出される、いわゆるターンオーバー時に一緒生み出されます。
他には皮膚にうるおいやツヤをもたらす良質の脂質をしっかりと取り、コラーゲンの生成を促進してくれるビタミン・ミネラルを上手に摂取しましょう。
詳しく知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。
ニキビ肌でお悩みの方
ニキビ肌の原因は、ターンオーバが乱れることによって敏感になった肌から皮脂が過剰に分泌されたり、溜まってしまった皮脂が炎症を起こしてしまったりするためです。
ニキビ肌でお悩みの人はまずは余分な脂質や糖質を避けることで肌の酸化を防ぎ、ターンオーバーが滞りにくい肌の準備をしてあげましょう。
その上で、肌の免疫力をあげたり、代謝を促してくれる
- ビタミン類
- 亜鉛
を十分に摂取します。
水分をしっかりとることもターンオーバーの助けになるので、できれば白湯や、常温程度のお水もしっかりと摂りましょう。
具体的な栄養素や、生活面で気をつけたいことはこちらの記事を参考にしてください。
シミやくすみにお悩みの方
シミやくすみには様々な原因が絡んできますが、栄養面で気をつけたいワードは「糖化」と「活性酸素」です。
糖分の取りすぎで糖化した肌は茶色くくすみ、代謝ができにくい状態になります。
また、活性酸素で酸化した皮脂は過酸化脂質へと変化し、通常よりも濃く、頑固なメラニン色素の生成につながるので、いつまでたってもシミが消えない・濃くなる原因になります。
シミやくすみでお悩みの方にとっていただきたい栄養素は、
- ビタミン
- 鉄分
- リコピン
- ポリフェノール(特にエラグ酸)
- メチオニン(L-システイン)
- アスタキサンチン
- たんぱく質
です。
ここで挙げている栄養素は、どれもシミの生成を抑制したり、発生したシミを体外に排出することで薄くしたりする重要な役割を持っています。
特にビタミンCや、リコピン、エラグ酸は、シミにアプローチする力が高いので、
積極的に日々の食卓に加えたいですね。
シミの出来る原因や、シミに対抗する栄養素を知りたい方は
こちらの記事を参照してください。
シワやたるみでお悩みの方
シワやたるみの原因はシミの原因と同じく「糖化」や「活性酸素」ですが、それに加えて「乾燥」がキーポイントです。
糖分の摂りすぎで糖化したり、活性酸素で酸化した肌細胞は代謝機能が著しく下がります。
肌にハリやうるおいをもたらしシワやたるみを防ぐコラーゲンやエラスチン、天然保湿因子やセラミドは、肌が代謝しターンオーバーする過程で生成されます。
代謝機能が低下した肌細胞はターンオーバーしづらくなっているので、これらの肌に必要な成分が作り出されずに、シワやたるみを引き起こしてしまいます。
また、肌細胞を作るたんぱく質や脂質も足りていないと、肌の乾燥が進み、シワの原因になります。
シワやたるみにお悩みの方に摂っていただきたい栄養素は、
- たんぱく質
- ビタミンC
- 鉄分
です。
肌の材料となるたんぱく質を十分に摂り、コラーゲンの生成を促進してくれるビタミンC・鉄分で肌のハリを整えましょう。
同時に、水分もきちんと摂りましょう。
特に冬は水分をこまめに取らなくなる傾向になりますので、温かい白湯やハーブティーなどで、喉の渇きを覚える前に定期的に飲むことを習慣づけられるといいですね。
そのほか、シワやたるみについて詳しく知りたい方はこちらをどうぞ。
控えたほうがいい食べ物
ここまで、美肌のために口から取り入れたい栄養素についてお話ししましたが、摂ったほうがいい栄養素があるならば、摂らないほうがいい食品や成分もまたあります。
代表的なものは、
- 過剰な炭水化物や甘い食品
- スナック菓子や油分の多い加工食品
- アルコール
- タバコ
です。
先にも書きました通り、過剰な炭水化物や糖分は細胞を糖化させ「AGEs」を生み出す原因になります。
AGEsは茶褐色でシミやくすみの原因になったり、細胞を固くすることで肌のハリを失わせます。
スナック菓子や油分の多い加工食品は肌の細胞や皮脂の酸化を招きます。
アルコールを摂取した際に分泌される「コルチゾール」という物質には、肌細胞の代謝を低下させてしまう性質がありますし、アルコールを分解する際に大量の水を消費しますので乾燥やシワを招きます。
タバコは食品ではありませんが、口から摂取するという意味では一番注意が必要です。
喫煙することで体内には活性酸素が発生します。
活性酸素は肌の老化全般を招くうえ、体内から除去する際にビタミンCを大量に消費してしまいます。
結果として、摂取したビタミンCが美容に生かされず無駄になってしまいます。
また、ニコチンは血管を収縮させ、代謝を低下させてしまいます。
「スモーカーズフェイス」とも言われますが、喫煙している人の肌の老化は喫煙していない人に比べて格段に速いとされています。
しかし、糖質や脂質は人間の活動に欠かせない栄養素ですし、アルコールにもその種類によっては、ワインのポリフェノールなど美容に良いとされているものもあります。
「絶対に摂らない!」とはならず、体のためにも「適度」を心がけて摂取するようにしましょう。
ただしタバコは美容にいい事は認められませんので、可能であれば控えたほうが美容にはいいですね。
まとめ
スキンケアで表面的に解決しようと思いがちな肌トラブルですが、まずは「肌トラブルを起こさないこと」ためには体内環境を整えてあげることが大切です。
とにかくビタミン!や、とにかくコラーゲン!!などの偏った栄養の取り方では肌へ栄養は行き渡らずに、生気のないカサカサの肌になってしまうことも。
たんぱく質やビタミン類など、無理のない範囲でバランスよく取り入れることを習慣付けましょう。
どの栄養素が肌にどんな影響を与えるのかを理解していると、普段の食事に取り入れやすくなりますね。