美肌の万能薬 プラセンタの種類と効果

「プラセンタ」とは?

プラセンタとは、英語で「Placenta(胎盤)」という意味です。胎児が母体の中で育成していくための大切な器官で、妊娠した際に子宮内で作られます。
このプラセンタ(胎盤)は、ヒトを含む哺乳類や一部のサメに存在します。

胎盤には五大栄養素(タンパク質・脂質・糖質・ビタミン・ミネラル)やアミノ酸、酵素など、胎児の育成に重要な栄養素を多量に含みます。
胎盤自体が豊富な栄養素の宝庫のため、ヒト以外で哺乳類が生まれてくる際、胎盤を食べて栄養補給を行う胎児も中にはいます。

プラセンタには自然治癒力や体力回復を促進する効果があるとされており、古代ギリシャの医療で用いられていたという言い伝えもあります。

紀元前の中国では妙薬、江戸時代の日本では秘薬として不老長寿のために使用されていました。美容目的では、世界三大美女や近世フランスの王妃もプラセンタから作られた薬を愛用していたと言われています。

世に出回っている「プラセンタ」は、ヒト由来の場合は医療でのみ使用されます。
昔は、ごく一部の化粧品などにヒトの胎盤が使用されていた時期がありましたが、現在は医療目的以外での用途は禁止されています。

化粧品やサプリメント、ドリンクなどで使用されているプラセンタは、ほとんどが馬や豚などです。

プラセンタで期待できる効果

近年のプラセンタは健康や美肌の万能薬と言われるほど、健康食品や美容品としても注目されています。

プラセンタで改善される5つの健康効果

健康面での改善効果として、次の5つがあります。

  • 自律神経調整作用
  • 免疫力の強化
  • 疲労回復
  • 抗アレルギー作用(花粉症やアトピーなどを抑える)
  • ホルモンバランスを整える(生理痛や更年期障害の緩和)

主に、体調を整える効果をもたらします。健康食品としてサプリメントやドリンクなど、体内から摂取する方法があります。

医療機関では治療目的としてプラセンタ注射を取り扱っています。その他に便秘や冷え性対策、生活習慣病の予防などあらゆる健康面に効果があるとされ、プラセンタのサプリメントを処方する病院も増えています。

プラセンタで改善される5つの美容効果

美容面での効果として、主に次の5つがあります。

  • 抗酸化作用(アンチエイジング)
  • 抗炎症作用(日焼けやニキビなどによる炎症を抑える)
  • コラーゲンの生成(シワの予防効果)
  • 血行の促進(肌のくすみを抑える)
  • 新陳代謝(ターンオーバー)の促進

プラセンタにはEGF(Epidermal Growth Factor)という成分が含まれています。このEGFは上皮成長因子とも呼ばれ、皮膚の再生治療などに使用される成分です。表皮細胞の成長を促進させたり、血行の改善やコラーゲンを増殖させる働きをするため、エイジングケアとしての効果があります。

このEGFはもともと、ヒトの肌や唾液に含まれています。母乳にも含まれているため、赤ちゃんが育つ上で重要な栄養素の一つとも言えます。

しかし、年齢とともにEGFは減少していくため、肌の再生機能が衰えて怪我が治りにくくなったり、くすみ・たるみ・シワ・シミなどが出やすくなる要因になります。

プラセンタを含んだ化粧品を使用したり健康食品やサプリメントを摂取することで、EGFの働きを補うことができます。

プラセンタの種類について

プラセンタ製品に使用されるプラセンタには、大きく分けて3種類あります。

本来プラセンタとは哺乳類の胎盤「動物性プラセンタ」のことを指しますが、その他に「植物性プラセンタ」と「海洋性プラセンタ」があります。この2種類の成分はプラセンタと似たような栄養素や働きを及ぼすことから、プラセンタと呼ばれています。

それぞれのプラセンタの特徴と違いを説明します。

動物性プラセンタ

哺乳類の胎盤から抽出したプラセンタです。主な動物性プラセンタは以下になります。

ヒト由来のプラセンタ

日本での取り扱いは医療用のみに限られています。
ヒトの胎盤から抽出されたプラセンタエキスは注射薬や点滴、医薬品として治療や美容目的で使用されます。

豚由来のプラセンタ

最も多く使用されているプラセンタです。豚の出産は一度に10匹ほど、更に年に2回は出産が可能なため、多くのプラセンタを抽出することができます。

また、豚由来のプラセンタの分子構造がヒトと近いため、吸収性に優れていると言われています。

「SPF豚」のプラセンタ

豚由来のプラセンタの中でも、安全性・品質・栄養価が高いとされている「SPF豚」から抽出されたプラセンタがあります。

SPF豚とは衛生的に徹底された管理下で飼育され、病原体を持ったり感染症にかからないよう健康的な状態の豚のことを言います。抗生物質や抗菌剤を使用されることはほぼないため、安全性も高いとされています。

通常の豚と比べて胎盤の滅菌処理の過程で失われる有効成分が少なくなるため、SPF豚のプラセンタはより効果が得られると言われています。

馬由来のプラセンタ

他のプラセンタと比べてアミノ酸含有量が多く、豚よりは感染症などの病気にかかりにくいので安全面も高いとされています。
ただし、出産は年に1回1頭であるため、プラセンタの抽出量が少なく稀少価値が高いのがデメリットです。

サラブレッド(優駿)のプラセンタ

馬由来のプラセンタの中で、より安全で栄養価が高く安定した品質を誇る国産サラブレッド(優駿)のプラセンタがあります。
大切に飼育されているがゆえ稀少価値は更に高く、価格も高価になります。

牛由来のプラセンタ

国内の商品では牛由来のプラセンタは見掛けなくなりましたが、以前はよく使用されていました。牛の胎盤は大きく、豚よりも更に多くのプラセンタを抽出することができました。

しかし狂牛病の危険性があり、現在は使用を禁止されています。

羊由来のプラセンタ

ヨーロッパなど海外で使用されています。
ヤコブ病の感染症があるとし、人体への害の可能性はないと言われていますが日本では使用が規制されています。

植物性プラセンタ

植物性プラセンタは、めしべの一部、胚珠がついている「胎座」と呼ばれる部分になります。
メロンやカボチャなどで見られる、種の周りの繊維状になっている部分です。

この「胎座」も英語で「Placenta」といいますが、胎盤にあるようなEGF(成長因子)や抗酸化作用はありません。そのため、動物性プラセンタと同じように細胞の成長を促進させるような効果は期待できません。

しかし動物性プラセンタとは同等の効果は得られなくても、発芽させるための栄養分としてアミノ酸・ビタミン・ミネラルなどが豊富に含まれているため、美容成分としては期待できる成分になります。

また、植物性プラセンタには副作用がほとんどなく安全性が高いとされていますが、アレルギーの心配がある場合はパッチテストを行うなどの注意が必要です。

プラセンタと似ているイソフラボン

大豆由来のイソフラボンをプラセンタの代替成分として配合している商品もあります。

イソフラボンは植物性エストロゲンとも呼ばれており、女性ホルモンの一種「エストロゲン」を補う作用があります。これにより、抗酸化作用やホルモンバランスを整えたりするなど、プラセンタと似た効果を発揮します。更に、乳がんや子宮がんなど女性特有の病気も予防します。

ただし、イソフラボンの過剰摂取は要注意です。
大量に摂取してエストロゲンの割合が増えると、逆にホルモンバランスが崩れる恐れがあります。

海洋性プラセンタ

海洋性プラセンタとは、魚由来のプラセンタです。マリンプラセンタとも呼ばれており、魚の卵巣膜から抽出して利用されます。

植物性プラセンタと同様、胎盤ではないので厳密にはプラセンタではありません。

魚の卵巣膜は卵を守り育てる部分で、哺乳類の胎盤のような役割をしています。ホルモンバランスを整えるグリシリンを始め、アミノ酸など豊富な栄養素が含まれているため、美容成分としても十分に期待できます。

哺乳類のような感染症はなく、安全性が高いとされています。

プラセンタを取り入れるには

プラセンタを摂取する方法は、大きく分けて3つあります。

プラセンタ注射

プラセンタ注射薬には厚生労働省が認可している医薬品として、メルスモンとラエンネックの2種類があります。

肝機能障害や女性特有の更年期障害などの治療目的の場合、保険が適用されます。アンチエイジングなど美容目的で注射をする場合は、保険適用外になります。
メルスモンとラエンネックを製造する過程で胎盤提供者の感染症検査や滅菌処理は行われますが、100%安全である保障はなく、副作用が出る場合があります。

また、ヒト由来のプラセンタ注射の経験者は感染症のリスクがあるとし、献血や臓器提供が制限されています。プラセンタ注射経験者による献血で感染症などが起きた実例は今のところありませんが、予防措置として厚生労働省が呼びかけを行っています。

効果としては、個人差によりますが一度で効く可能性が低いため、医師の診断のもと定期的に続けることが大切です。

サプリメント・ドリンクの飲用

豚や馬由来のサプリメントやドリンク、粉末状の商品を飲用することで体内にプラセンタを取り入れます。

馬プラセンタは豚プラセンタと比べて稀少価値が高いため、高価な傾向にあります。しかし成分はほとんど同じなので、効果的にはどちらも変わりありません。

また、プラセンタは原液・原末のままではなく、飲みやすく加工されたり希釈したものがほとんどです。サプリメントやドリンクを選ぶ際、プラセンタの原料が馬か豚かではなくプラセンタそのものの含有量を比較して選ぶことが重要です。

効果があらわれる時期は個人差によりますが、ホルモンバランスを整える(生理不順や更年期障害など)目的の場合は約3ヶ月以上、アンチエイジングなど美容目的の場合は半年〜1年が大体の目安になります。

化粧品の塗布

国内の化粧品で取り扱うプラセンタも、豚や馬由来のものがほとんどです。美容目的や、日焼けやアレルギーなどの炎症を抑制させるために、肌の外側から塗布してプラセンタを取り入れます。

プラセンタ入りの化粧品は、化粧水やクリーム・クレンジング剤・石鹸などの基礎化粧品やメイク化粧品など多岐に渡ります。

化粧品の場合も、配合されている動物性プラセンタの種類によって効果はあまり変わりはありません。プラセンタの濃度が重要です。プラセンタの化粧品も希釈して配合されたものがほとんどなので、効果は濃度や個人差によりますが3ヶ月以上を目安に長く使用することをおすすめします。

また、植物性プラセンタや海洋性プラセンタを配合した商品もありますが、プラセンタ本来の成長因子の効果「アンチエイジング」や「肌の再生機能」などは期待できません。
効果として潤いやツヤ・ハリなどを求めるのであれば、動物性プラセンタよりも安価で手に入る植物性、海洋性のプラセンタ商品を試すのも良いでしょう。

自分に合うプラセンタを選ぶ3つのポイント

「プラセンタ」と一括りに言っても今では種類や摂取方法も多種多様で、自分に合ったものがどれなのか迷ってしまいがちです。

プラセンタを選ぶポイントは大まかに言うと以下の3つです。

  1. 何由来のプラセンタなのか
  2. プラセンタの濃度
  3. どの摂取方法であれば続けられるのか

プラセンタを取り入れるには、種類・摂取方法に関係なく続けていくことが大切です。

プラセンタは素材や抽出処理に手間がかかるものなので、安価なプラセンタ商品ほど、濃度が薄く、長く続けないとなかなか効果を実感できません。
人によっては副作用やアレルギーなどを引き起こす場合もあります。

使用にあたり医師に相談したり、様子を見ながら摂取するといいでしょう。