界面活性剤は肌に悪い?界面活性剤と化粧品の関係とは。

なにかと「肌に悪い」と誤解されがちな界面活性剤ですが、界面活性剤にはスキンケアに欠かせない役割があります。

まずは界面活性剤とはなんぞや?というお話からしていきましょう。

化粧品における界面活性剤とは?

界面活性剤とは簡単に言うと、水と油などの反発し合う成分同士の界面(さかいめ)に働きかける役割を持った成分のことを指します。

界面活性剤には乳化浸透分散起泡の4つの作用があります。

  1. 乳化作用
    反発し合う水と油を界面活性剤の力で混ぜ合わせます。
  2. 浸透作用
    界面活性剤が水の界面張力を下げることで、水分が浸透しやすい状態にします。
  3. 分散作用
    水と混ざり合わない粒子も界面活性剤の作用で水中に均一に分散され、混ざり合ったようになります。
  4. 起泡作用
    洗浄剤の泡立ちをよくします。

界面活性剤の作用として多くの人がピンとくるのが洗浄ですが、洗浄はこの4つの作用が複雑に効果を発揮して起きています。

洗浄の仕組みを簡単に説明すると、

  1. 泡立てられた界面活性剤が肌と汚れとの間に浸透し
  2. 汚れを水中に分散させたり
  3. 油汚れを水と乳化させることで洗い流します。

 

洗顔に使われる界面活性剤って?

洗顔をまずはクレンジングと、石けんや洗顔フォームなどの洗顔料の2つに分けて説明します。

■クレンジングに配合されている界面活性剤

ほとんどのメイク用品には、メイクが崩れてしまわぬよう汗などの水を弾く目的で、オイルが配合されています。
メイク用品に含まれるオイルは、皮脂などと比べると洗い流すのが困難です。
メイクはオイルをなじませることで肌から浮いてくるので、ほとんどのクレンジングにはオイルが配合されています。
しかし、メイクのオイルにクレンジングのオイルを重ねると、最終的な洗い流しはますます困難になりますよね。

そこで活躍するのが、界面活性剤です。

クレンジングに使われる界面活性剤は、汚れと混ざったオイルを洗い流しやすくするための「乳化剤」の目的で配合されています。

  • 乳液・ジェルタイプ
    水をベースにオイルの粒と界面活性剤が含まれている。
    メイクとオイルが馴染むまでを丁寧に行う必要があるが、メイクが十分に馴染んだ後の洗い流しは比較的簡単。
  • オイルタイプ
    オイルの中に界面活性剤が含まれている。オイルの比率が高いのでメイクなじみはいい。
    馴染んだオイルをさっぱりと洗い流せるよう、界面活性剤の割合も比較的高い。
  • クリームクレンジング
    オイルをベースに水の粒と界面活性剤が配合されている。
    メイクなじみは比較的良いが、オイルクレンジングと比べて界面活性剤の割合が低いので丁寧な洗い流しが必要。

メイクはクレンジングに含まれるオイルとなじませることで浮いてきますが、このメイク汚れと混ざり合ったオイルを乳化させて洗い流す目的で界面活性剤が配合されています。

ただし、いわゆる水クレンジングと言われるようなオイルフリーのクレンジングはまた少し違っているので、要注意です。

水クレンジングの場合はメイクをなじませるオイルが配合されていないので、界面活性剤の力だけでメイクを落とします。
洗浄力の高い界面活性剤が配合されることが多いので、肌への負担が比較的高くなりがちなクレンジングです。

■泡洗料に配合されている界面活性剤

一方、洗顔に使われる界面活性剤は、界面活性剤の石けんその他の合成界面活性剤の洗顔料の2種類に大きく分けることができます。

石けんは天然の界面活性剤です。
洗顔用の石けんはアルカリ度が低く、弱アルカリ性であることがほとんどです。

石けん以外の洗顔料に配合されている界面活性剤は全て合成界面活性剤です。
洗顔フォームがその代表ですね。
肌と同じ弱酸性であることが多いです。

洗顔の目的は、不要な汚れや皮脂・角質を取り除くことです。

弱アルカリ性の石けんは、弱酸性の皮脂や角質を中和して取り除くことに長けています。
しかし弱酸性の洗顔料はアルカリ性の汚れである水垢などには効力を発揮しますが、同じく弱酸性の人の皮脂汚れや角質にはうまく作用しません。

そこで弱酸性の洗顔料には合成界面活性剤を配合し、合成界面活性剤の力で皮脂や角質を落とす仕組みになっています。

《それぞれの簡単な特徴》

  • 石けん
    界面活性剤の一種。
    弱アルカリ性の性質を持ち、余分な皮脂や角質をやさしく落とす。
    石けんの界面活性剤は水に分解しやすいので、洗い残しがなく地球の環境にも優しい。
    弱アルカリ性のため、肌荒れしている時に使用するとピリピリと感じる場合がある。
  • 石けん以外の洗顔料(洗顔フォーム・泡タイプの洗顔・ジェル洗顔など)
    合成界面活性剤の力で皮脂を落とす。
    弱酸性であることがほとんどなため、肌へのピリピリとした刺激は感じにくい
    合成界面活性剤には肌のバリア機能にまで作用するものもあるので、ものによっては肌トラブルの原因になることも。

石けんとそれ以外の洗顔料の違いとして、他にも洗い上がりの感触が挙げられます。

石けんの洗い上がりは比較的さっぱり目で、それ以外の洗顔料ではしっとり目になることが多いのですが、ここにも落とし穴が。
前述した通り、石けんは天然の界面活性剤で水に分解されやすく、界面活性剤が肌に残りにくいため洗顔後の化粧水や美容液が肌に浸透しやすい状態になっています。

対して石けん以外の洗顔料は洗い上がりにしっとりとした感じがあるものが多いですが、このしっとりは合成界面活性剤の膜が肌表面に張っているような状態なので、洗顔後の化粧水や美容液がうまく浸透しないことがあります。

洗顔の目的は、余分な汚れを落とすことです。
洗顔自体に肌をしっとりとさせる効果は期待しないほうが賢明でしょう。

石けんには、長時間かけて乾燥させる枠練り石けんと、機械で乾燥させる機械練り石けんがありますが、枠練り石けんは持ちや泡立ちがいいのが特徴です。
機械練り石けんは手頃な価格で手に入りやすいですが、湿気を吸ってふやけたり、使用途中でひび割れしたりすることもあるので、石けんを選ぶ時には製造方法にも注意してみましょう。

保湿剤に使われる界面活性剤は?

洗顔だけではなく、保湿剤にも界面活性剤は広く用いられています。

乳液やクリームなど、水と油が混ざり合っている形状の保湿剤には必ずと言っていいほど乳化作用のある界面活性剤配合されていますし、界面活性剤の浸透作用はお肌に水分を浸透させやすくしてくれています

界面活性剤が必要なのは、水と油を乳化させている乳液やクリームだけではありません。

例えば保湿に効果のある美容成分、セラミドは油溶性の美容成分です。
美白に効果があると人気のビタミンC誘導体も油溶性のものもありますし、肌にハリをもたらすパルミチン酸レチノールも油溶性です。

こういった油溶性の美容成分を化粧水や美容液の中に配合する際にも界面活性剤の力が必要になります

また、成分が化粧水や美容液の中に均一に混ざり合った状態にするためにも、界面活性剤の分散作用が利用されています。
この分散作用のおかげで、使い始めから使い終わりまで成分の濃度や効果がバラバラにならないで済むのです。

肌にいい美容成分をいっぱい、安定して配合できるのは界面活性剤のおかげでもあるんですね。

保湿剤に用いられる界面活性剤も合成界面活性剤ですが、中には天然界面活性剤と言われる大豆由来のレシチンなどもあります。

界面活性剤が危険と思われている理由は?

化粧品には欠かせない成分、界面活性剤。
それなのに何故か嫌われてしまう理由も、その界面活性作用にあります。

界面活性剤は水と油の界面作用することでなじませる力を持ちますが、その作用が肌のバリア機能をつかさどる皮脂膜にまで影響してしまうことがあるからです。

皮脂膜は肌を守るバリア機能の中でも、一番外側で肌の水分を保ったり外部の刺激から肌を守ったりする役割がありますが、名前の通り皮脂、つまり油で構成されています。
この皮脂膜に界面活性作用のある洗顔やクレンジングを使いすぎると、この皮脂までが水と馴染んで洗い流されてしまい、肌のバリア機能が壊れてしまうのです。

といっても、化粧品に含まれる界面活性剤は基本的には安全です。
洗浄作用として界面活性剤が配合されているクレンジングや泡洗顔は皮脂を洗い落としやすいので、なるべく刺激の少ないものを使い丁寧な洗顔を心がけましょう。

保湿剤に配合されている界面活性剤はあまり気にする必要はありませんが、気になる方は界面活性剤が配合されていない、または配合割合が低いものを探すといいでしょう。
オイルフリーの美容ジェルなどはオイルと水分を乳化させる必要がないので、界面活性剤が配合されていないことが多いのでチェックしてみてくださいね。